仏教彫刻のワンダーランド

 パタヤという地名は多くの人が聞いたことがあるだろう。ベトナムの戦争時代に米兵の休暇地として整備されたという歴史を持つ老舗のビーチ・リゾートだ。海岸沿いに多くのホテルが建ち並び、夜の喧噪でも有名だ。

 私がタイへ始めてきた頃は、スクムビット通りを渋滞にイライラしながらだらだらと走り、4〜5時間かかって行ったものだ。日帰りはちょっとキツイなという場所だった。(そのころはオンボロ車が多かったせいもあるかも知れない。)

 しかし、今や高速道路が整備されて、バンコクから2時間で着いてしまうため、日本で言えば、さしずめ江ノ島・湘南海岸といった位置づけになっている。海もお世辞にもきれいとは言えないし、浜辺の砂も白くはない。泳げるギリギリの線、というのが私の感想だ。それでも週末になると多くの人が訪れる、文字通り気軽な観光地になった。

 このパタヤで最近、妙に有名になりつつある、不思議な施設がある。

 見るからに「何だこれ?」といった建物である。今年、タイ観光省がUnseen In Thailandというキャンペーンをやっている。4年前?のAmazing Thailandの続編という感じである。この、Unseen In Thailandのパンフレットでこの建物が取り上げられて(ごくごく一部で)話題を呼んだ。私の周りのタイ人に聞いても誰も知る人はいなかった。さすがUnseenというだけのことはある。

 さて、この建物は何か?お寺?違う。何しろ、古いものでも何でもなく、今も建設途上なのだ。タイで2番目だか3番目だかに金持ちだと言われているオッサンが、22年前に思い至って建設を開始し、完成まであと15年かかる、つまり全部で37年かかると言われている、というよりご本人がそう言っているという建物だ。つまり、個人の道楽なのだ。入場料500バーツを取られるのでビジネスとも言えるのかも知れないが、とてもじゃないが利益は出ていないだろう。理由は読み進んで頂きたい。

 「いったい何なんだ?」と言われそうだが、プラサート・サッチャタムという名前が付けられている建物である。これはタイ語ではなく、サンスクリット語とともに仏教で多用されるパーリ語で、プラサート=お城・聖域、サッチャタム=真実・仏陀の言葉、と言う意味である。英語ではSanctuary of Truthと書いてあるが、名前を聞いたところでさっぱりわからない。

 高さ100メートルのこの建物自体はタイのお寺を模して建てられているのだが、随所にちりばめられているのは、このお金持ちのオッサンが集めてきた、インド・中国・クメール(カンボジア)・タイなどの仏教彫刻(多くは木製の仏像)なのだ。そして、それらのアンティーク彫刻を建物の一部として組み込み、修復も行っている。しかも、それらアンティーク彫刻のデザインに合わせて、 今なお多くの宮大工を雇って15年後?の完成に向け、日々着々と建物や内部の彫刻が作られ続けているという壮大なものなのだ。

上の写真は屋根や軒先などに配置された彫刻、下の写真は建物内部の壁や天井にちりばめられた彫刻だ。

外部にもこのように様々な彫刻が施されている。

 入場料500バーツと書いたが、最初から最後までガイドさんがつきっきりで、懇切丁寧に説明してくれる仕組みになっている。(英語・タイ語)

 しかも!、同じ敷地内でなぜかイルカさんのショーが行われており、こちらの料金も込みになっている。実は私はこの建物の写真が撮りたいためにここを訪れたのだが、入り口から付き添ってくれたガイドさん(二十歳そこそこの女のコ)から聞いて初めて知った次第である。「お金がもったいないから見に行きましょう。」としつこく言うので負けてしまった。

 しかし、この取り合わせはいったい何なんだ?件の金持ちのオッサンは仏教彫刻とイルカさんが好きなのか?う〜ん、なかなか侮れない組み合わせだ。(意味不明)

 エ〜、イルカさんの芸そのものはなかなかショボイものであった。しかし、可愛いイルカさんに触らせれてもらえるどころか、プール(海と繋がっている)へ入って一緒に泳いだり遊んだりしてもいいということで、ひょっとすると大喜びの人もいるのではないか。泳げない人や子供にはライフジャケットも貸してくれるそうだ。しかし、残念ながら、この日はそういう人はいなかったが...君もトリトンになろう。(古すぎて意味不明)<鈍無庵>

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