マレーシアとの国境貿易で賑わうハジャイ

けっこう遠いものですねぇ。

 タイのほぼ南の端、つまりマレーシアとの国境に近い場所にハジャイという街がある。正式にはハトヤイと言うらしいが、地元では皆ハジャイと言っている。タイ南部の方言だろう。バンコクから直線距離で約750Kmもあるから、バンコク〜ホーチミン間あるいはバンコク〜チェンマイ間よりも遠いわけで、プーケット島よりもさらに南にあるのだ。

 バンコクからはタイ航空が1日4往復している。エアバスA300というなかなか大きな飛行機が就航している。小生は飛行機には詳しくないが、エコノミー・クラスのシート配列は2−4−2だから300人は乗れるのではないか。しかも、1日4往復のうち一便はシンガポールまで行っている。つまり、ハジャイ空港は国際空港なのだ。駐機するブリッジも二つあり、ヤンゴンやプノンペンなどよりもずっと立派な空港である。

バンコクとの往復航空券は5,980バーツで、タイム・テーブル上では所要時間が片道1時間半となっているが、小生の経験では離陸してから概ね1時間10分くらいで着くようだ。灼熱のコンクリートの上を歩かなくてよいので助かる。

 一般的な日本人観光客にとっては、この街はあまり魅力的なところではないかも知れない。特に見るべき観光地もないからだ。しかし、この街は国境貿易でとても繁栄しており、タイ国内からもマレーシアからも買出しに来る人々が絶えない。小生は仕事上の取引があって何度も訪れたことがあるのだが、これまでは常に日帰りだった。今回は初めて一泊してみることにした。

 「迎えに行くよ。」という取引先の中国系タイ人の申し出を丁重に断り、エアポート・タクシーに乗ってみる。空港の専用カウンターでお金を先払いするのだが、市内までは240バーツ均一だった。車内には「空港まで200バーツ」というステッカーが貼ってあり、電話番号が書いてある。「何で往復で料金が違うの?」と聞いてみると「俺達は市内と空港の間のお客以外は乗せちゃいけないことになってるんだ。でも市内を流していて空港へ行くお客を探すってのは難しいから空車のまま空港へ帰ることが多いんだ。だから空港へ行くということで呼んでくれたお客にはちょっとサービスしてるんだよ。」ということだった。

バンコクだったら1,500バーツくらいかなぁ。 さてタクシーに乗ったはいいが、宿泊先は決めていないし、これまで一泊もしたことが無いのでどんなホテルがあるのかも気にかけたことがない。また運ちゃんに聞いてみると「高級なところならLEE GARDENかNOVOTEL」とのこと。プライベートなのであまりお金を使いたくも無いのだが、バンコクよりは安いだろうと思い、NOVOTELに行ってみることにした。市内の繁華街の中心部にあり、今回の主目的であるマーケット探訪に都合が良いからだ。

 25分ほどでセントラル・デパートに着いた。ここの6階から上がNOVOTELになっている。フロントで空室を確認し、レートを訊ねてみると「シングルで2,400バーツ、ツインで2,500バーツ。」との答え。「ずいぶん高いなぁ。」と思い、件の取引先のオヤジに電話してみた。すると「そこはウチのコーポレートでは1,600バーツだよ。泊まりとは知らなかったよ。先に言ってくれりゃ良かったのに。とにかくオレの方から予約を入れておくから、今はチェック・インせずに街でもブラブラしよう。10分くらいで迎えに行くから。」ということになった。なるほどコーポレート・レートという企業向けの割引料金があることは知っていたが、これほど料金が違うものなのか。不審顔のフロントの女性達に「友達から予約を入れてもらうから。」と言って、オヤジが迎えに来るまでの間、話を聞かせてもらった。この街へはマレーシア国境から車で1時間くらいで来れてしまうこともあり、予約も入れずにふらっとやってくるお客が多く、ホテルの空室管理がとても難しいのだそうだ。予約無しのお客が夜中の12時を過ぎてもかなり来るそうだ。日帰りのつもりでやって来て、取引先との付き合いなどで結局一泊しなければならなくなった、というようなケースがたくさんあるのだろう。

 そうこうしているうちにオヤジが迎えに来た。まずはすぐ近くにある市場を歩いて見ることにした。バンコクにももちろん“タラート(市場)”と呼ばれるものは何ヶ所もあるが、大きなものはあまり無い。この街の繁華街は全部市場のようなもので、バンコクとはちょっと感じが違っており、むしろプノンペンやホーチミンなどのマーケットに近い雰囲気がする。もちろん、外観上はそれらよりずっと綺麗ではあるが。チャトゥチャックともまたちょっと違った趣きがする。中国系に混じってマレー系・インド系などの客の姿が非常に目に付くかわり、白人観光客の姿がほとんど見えないのでそのような印象を受けるのかも知れない。

売り子の人もムスリムが多いなぁ。 ワケの分からないお菓子がたくさん。 リンゴ・ブドウ・柿が主役のよう。

市場の中にはもちろん地元の人達のための日用品や電気製品などもあるのだが、観光客達が物色しているものは主に、@果物、Aフカヒレ・シイタケ・海苔などの中華素材系の乾物類、Bお菓子・豆類、C安物の時計・ライターなどだ。果物を買って帰るということは比較的近場から来ている証拠だろう。バンコクのスーパーのようなトロピカル・フルーツ一色という感じではなく、リンゴ・柿・ブドウなどが目に付き、干し柿なども売っていた。中国産のものが多いようだ。ブドウ・リンゴなどはバンコクの半額という感じがする。豆類をメインにした店がとても多く、ベトナムのカシューナッツ、イランのピスタチオ、などと表示してある。ピスタチオ100g30バーツ、味付け海苔1パック40バーツなどで、これらもやはりバンコクのスーパーの半額以下というレベルだ。お菓子類は中国語・韓国語などで表示されたものが多く、わけのわからぬ間違った日本語が書かれているものも多くて笑える。案内してくれたオヤジの説明によれば、「安いのはちゃんと輸入税を払ってないからさ。厳密に言えば密輸ってことになるのかな。マレーシア経由で入ってくるものがほとんどだけど、なぜかマレーシアで売られている値段より安いそうだよ。だからマレーシアからも買出しに来るのさ。カンボジアやベトナムから船の上で闇取引されて入ってくるものもあるらしいんだ。」とのこと。なかなか奥の深そうな世界である。女性の方々にとってはそれなりに興味深い場所であると思うし、お土産をあげる人がたくさんいればいるほど楽しめるだろう。が、とにかく暑い。一時間くらいブラブラしているうちに汗ビッショリという状態になり、エアコンの効いたホテルへ退散した。

ホントに安かった。 豆類や果実の砂糖漬けなどが並ぶ。 なんだか懐かしいなぁ。

 この街には何度も来たことがあるのだが、そのたびに10年ほど前のヤワラート(バンコクのチャイナ・タウン、フアランポーン駅の西側一帯)に来たような感じがする。バンコクではすっかりマイナーになったシーロー(いわば軽トラックのタクシー)がまだたくさん活躍しているし、フカヒレや燕巣などをメインに掲げた中華レストランなどが目に付くからだろう。とても懐かしいような感じのする町である。ただ、所々に見られるイスラム教徒の人たちを相手にした洋品店などが、ムスリムの多いタイの南部にいるのだなということを思い出させてくれる。最近ベトナムで、体に合わぬアオザイを着てウロウロしている日本人の若い女性の観光客をよく目にするようになったが、ここでも似合わぬバティックを身に纏い闊歩する同類の方々を散見した。茶髪に厚化粧でそのようないでたちは見苦しいのでぜひやめてほしいものである。何だかイメクラのオネエ様みたいだ。(そんな風に感じるのは小生が動機不純だからか)                                                                                                                                                                                         

どこかでみたような風景 お金が無いので見るだけ。 タイとは違う色彩感覚 

 さて「日が暮れてからはどうなんだ?」という声が聞こえてきそうだが、当HPの内規に抵触するのでやめておこう。かなり面白い街であることは間違いないが、少なくともタイ語か中国語に不自由しない人以外にとってはかなりつらいのではないかと思う。だから小生も自重したのだ。(ホント)

 何しろ、この街では日本人などはまったくマイナーな存在である。「シャチョー!」「ヤスイヨ!」という声が飛び交うバンコクの夜に比べ、ここでは「ヒア・カー」という声で呼び止められる。「ヒア」というのは主に中国人に呼びかける言葉でもともとは“若旦那様”というような意味だ。運転手やメイドさんなどが日本人に向かって呼びかける「ナイ・ハン」(もともとはお屋敷のご主人という意味)に相当するだろう。「カー」というのはもちろん女性の挨拶サワディ・カーのカーだ。いわゆるタイで言う「カフェー」、つまりステージ上で歌っているコに「マライ」(首にかけるレイのようなものに100バーツ札などをたくさん付けたもので、日本のおひねりに相当するだろうか)を贈ると歌い終わった後で隣に座ってくれるという仕組みの所も多いが、歌われているのは中国語の歌ばかりだった。少なくとも、今ここで説明した言葉を「初めて聞いた。」という人や、「領収書が無いと困るよ。」という人はまずは地元の知り合いと一緒に行動すべきだろう。「そんなつれないことを言うな!」というアナタは「PINKLADY」という名前のお店を探してみよう。なんか期待できそうな名前でしょ?!<鈍無庵>

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