フェリー・ボート健在

 このマイナー・スポットのコーナーというのは何かと申しますと、「八っつぁん、ここァ知らないだろう。」とか「そう言う大家さんこそ、あすこへァ行ったァことがないだろう。」とか仲間内で自慢し合って、結局「それが何なんだよ、べらぼうめ。」とか「だからといって偉かないんだよ、エ〜。」などとお互い言い合おうじゃないかという、これまた大変に情けない企画でございまして、エ〜、しばらくご辛抱を願います。

ちょっとこの地図をご覧になって下さい。ちなみに緑色の線のところが、BTSという、建物の3階くらいの所を走る大変ハイカラな電車でございます。それから縦の1辺がだいたい18kmということになっております。

 チャオプラヤ河さんというのは、、、別に河にさん付けすることも無いんでございますが、、、大変にこうくねくねと曲がったもんなんでございますね。アタシは曲がったものは孫の手でも大嫌いという、ありゃァ先が曲がってないとダメなんでして、カニ・スプーンじゃァ背中はかけないんですが、そのォ大変真っ直ぐな正直者でございまして、、、話がちっとも先へ進みませんな、こりゃァ。

 話を急ぎますと、このォ、バンコクという所は大変地べたというものが平たく出来ておりますもんですから、河の水がこォ、どうにも流れようがねえじゃねえか、ってんで右往左往してしまう。いわゆる蛇行ということをするんでございますね。アタシも意外と学があるでショ。そんなことですから、長〜い間にはとうとうこんな形になってしまった。どれくらいかかったかァまだ本人に聞いてないんでわからないんですが。

 昔は自動車という物は無かったですから、皆さんどこへ行くのも船で行くのが当たり前だった。この地図を見ますと、なるほどバンコクてェところは運河だらけなんだなァということがよ〜くおわかり頂けると思います。

 ところが、昨今のように自動車でどこへでも行ってやろうじゃないかという便利な時代になりますと、かえって大変厄介なことになりまして、バンコクの向こう側、トンブリ地区と言うんですが、その南側にお住まいの方がバンコクの東南の方角のサムット・プラカーン県などへ行こうとするともうどうしようもない。今ではラマ9世橋という、大変に大きな吊り橋が架かったので少々楽にはなりましたんですが、その前はそのまた一つ川上のクルンテープ橋まで行かないと橋はありませんでした。その上でぐる〜っと大きく回って行かなければならない。 大変な遠回りでございますね。あちら側の方がこちら側にぜひ車で来てみたいという場合も同じでございます。

 ただでさえ、大変交通渋滞の激しいところでございますから、それはもう一筋縄ではいきません。人間様も馬鹿じゃありませんから、それじゃァ渡し船に人だけでなく車も乗せてしまおうや、ということでちょうどこのくびれたあたり、プラパデーンとパチャオという所の間にフェリー・ボートがあるんでございます、ハイ。

     

 これはプラパデーン側の船着き場なんでェございますが、どォですか、この形。もう、ただただ車が乗れればそれでいいやという、究極の船ですな。屋根すらありません。アタシも最初はオヤ桟橋が動き出したじゃァないかとびっくりしたくらいです。それでもって、舵取りの方は出来るだけ見晴らしのいい高いところへ上ってやっつけてしまおうというわけですな。ここらあたりはクロントーイの港よりも下にあたりますから、船の往来も大変激しいので無理もありません。ハシゴを登り降りしなければならないという変わった労働条件の船頭さんです。ずいぶんと揺れて大変なのじゃァないかと思いますがねエ 。

 これといって何をするために行ったということでもないものですから、しばらくボーッと、エエいつも通り、眺めていたんですが、数えてみますとね、ほとんど同じ形をした船が、ひぃふぅみぃと数えて七艘も一緒くたに働いているんですね。それも、もうひっきりなしに行ったり来たりしているという、大変儲かるご商売じゃないかと思って聞いてみたんですが、一回20バーツということでした、ハイ。

     

 こちらは50mほど離れた所にある人間様の乗る方の船でございます。この船の形は、オーキッド・シェラトンの所、いわゆるリバー・シティでございますとか、タクシン橋の袂の渡し船と同じ形でございますね。なんかこう、渡し船はこうでなければならないというようなお決まりでもあるんでございますかね。渡し船の専売公社というものは聞いたことがございませんが。こちらの渡し賃というのはたったの一バーツでございます。日本円で三円ということになります。こちらも沢山の方々がひっきりなしに往来するものですから、渡し賃を徴収なさるおばあちゃまの前はもう、コインの山でカジノのような有様でした。ルーレットは置いてませんでしたが。

    

 船着き場のあたりというものは、たいがいは小さいながらも市場があったり、バイク・タクシーのおァ兄さん方がたむろしていたりということで、これはもうお決まりですな。この日も、皆さん忙しそうに船で行き来なさっているんですが、この方々だけは暇そうにしておりましたな。顔見知りの妙齢の女の方が来ると奪い合ったりしておりまして。それはもう、背中のすぐ後ろにお座りになるわけですから無理もありません。急ブレーキなんかァかけた日にゃァ、もうドーンってんで...なかなかうらやましいご商売です。

 ところでプラパデーンのプラというのはお坊さん、いわゆる修行僧のことでございます。タイの方の発音を聞いておりますとパとしか聞こえないんでございますが。また、”偉大な”という意味合いの接頭語でもございまして、タイの現在の国王様をプラ・ラーム9世と申し上げます。外国の方はラーマ9世とおっしゃいますが。

 それではパデーンと言うのはいったい何かとバイク・タクシーの方に聞いてみましたら、おそらく人の名前で、そういったお名前の偉いお坊さんがいたのであろう、定かではない、という大変いい加減なお答えでございました。へ〜ェ、僧ですか。お後がよろしいようで。

<南方亭冷や奴>

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